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女性獣医師 として現役であり続けるために、私はこうしてきた
獣医大学での男女比は、近年、女性の方が高い傾向が強まっています。しかし、臨床勤務医、院長となると、女性の比率は極端に少なくなってしまいます。
その理由は男性に比べて、女性には、結婚、妊娠、出産、そして育児という事情があるためです。
女性獣医師 の中には、まさにこの問題に直面している人もおられるでしょう。そこで、出産育児をしながら現役を続けてこられた先輩にどのようにしてこの問題を乗り切って来たのかを伺いました。
大学時代はどのような獣医学生でしたか?
これは一昔前のことですが、今でも役立つ点もありますので、子育てしながら現役で働いている先生や働きたいと思っている先生になんらかの参考になればと思います。
私は親がサラリーマンなので動物病院のことがわからなかったこと、当時の大学での授業は馬中心で、小動物の授業がなかったこともあり、大学卒業後は大学病院の薬理学教室に入りました。
臨床獣医師としてのキャリアのスタート
その1年後に結婚して夫ともに開業準備に入ったことが臨床獣医師になるきっかけとなりました。
当時は、「動物病院を開業して生計が立てられるのだろうか」と思っていたくらいで、まだまだペット市場は小さく、周りの病院をみても、今のように綺麗で立派な病院はそう多くはありませんでした。
夫の勤めていた病院で開業準備を始めましたが、その病院は院長先生と奥様のご夫婦でやっている動物病院でしたので、
「動物病院とは夫婦でやるものだ」
というイメージが自然と作られていったのだと思います。
私たち夫婦も、子育てしながら、臨床獣医師を続けてきましたし、この小暮動物病院に勤務して独立・開業された先生方も、私たち夫婦を見習ったかもしれませんが、ご夫婦で臨床を続けながら子育てをされてきました。
女性獣医師に大切にしてほしいこと
この獣医師でも、サラリーマン社会でも、最初に入った所の環境で、その人の人生観や働き方に対する意識が決まると言わるように、
《特に女性は最初に勤務する病院選びでは、妊娠の時から子育て期間までの働き方、支援などについて院長先生にしっかりと確認をとっておくことが大事だ》
と思います。また、私たちのように、夫婦でやっている病院を探すのも一案でしょう。
働きながらの子育てについて
子育てで大変な時期は、小学校に入るまででした。そこでその期間をどうしたのかですが、3人子供がいますので、まずはゼロ歳児から保育園に預けるようにしました。
保育園では17時まではみてくれます。しかし、病院の診療時間は19時なので、その間の2時間をどうするのかが問題でした。
そのため、背中におんぶして診療したこともありますし、手術の時には、「私が子供たちをみていますから、先生方は手術に専念してください」と仰ってくださる飼い主さんもいました。
これは、今ではあり得ないことでしょう。
その後、少し大きくなってからは、テレビやビデオをみせて、その間に診療や手術をしたこともありました。
この子育て期間で助かったのは、やはり、親に来てもらったことと、家政婦さんを頼んだことです。休日に親に来てもらって、子供を預けて、手術をまとめてやったこともありました。
また、親に頼めない時は、家政婦紹介所に頼んで家政婦さんに来てもらっていました。
臨床獣医師をやめなかった理由とは?
獣医師でも、スタッフでも、女性の場合、妊娠、出産するとどうしても仕事よりも家庭中心になってしまって病院をやめてしまうケースが多いと思いますが、私が出産、子育てと仕事を両立させてきたのは開業時の借金があるのでやめられなかったというのが1つの理由です。
また、患者様と毎日接していると、「この子は私がしっかり治してあげなければ」と責任感が出てくるのでやめられなくなったというのがもう1つの理由です。
子供を家政婦さんに預けることに抵抗感がある人もいると思いますが、私は結果からみれば、家政婦さんを依頼して非常に良かったと思っています。その理由は、いつも同じ家政婦さんに来てもらったことで、子供達がいつしか馴染んで、信頼関係もできて、一緒に公園に遊びに連れて行ってもらうことまで、お願いできました。
そのためでしょうか、子供達も、今は自分が親になって子育ての真っ最中ですが、家政婦さんを頼んで大いに助かっているようです。
また、家政婦さんにお願いしたことで、子供達に親が働く姿をみせることができたことも良かった点です。
この経験から、若い女性獣医師先生にも、仕事と育児を両立させるためにはこの「家政婦紹介所」、今では「家事代行サービス」と言うらしいのですが家政婦さんを頼んでみるのもいい方法だと思います。
小暮忍先生(小暮動物病院、埼玉県春日部市)
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