動物病院に勤務している獣医師が転職で院長へ

奨学金返済の勤務医から 転職 で年収1000万円超の院長へ

西川:大病院の代診からピンチヒッター獣医師となったのも、そのピンチヒッター獣医師からいきなり大病院の院長先生になったのも、深野百合子先生が獣医業界では初のケースになりました。この開業( 転職 )を決断されたきっかけは何だったのでしょうか。

動物病院の開業のきっかけは?

深野:ピンチヒッター獣医師の面接を受けた時、まさか自分が開業して院長になるとは想像もしていませんでした。

学生時代、代診時代を通して開業したいと思ったことはありませんでしたが、大阪の病院でピンチヒッター獣医師をやっていた時、全国各地を移動して短期間で多くの患者さんを診るよりは、一カ所に落ち着いて何年もその患者さんを診ていきたいとの思いになりました。

そこでこの思いを同じピンチヒッター獣医師の作本元院長に話したところ、「私もそう思う。深野のキャリアとスキルがあれば、院長として十分やっていけるので、一カ所に落ち着いた方がいい」と言ってくださいました。

事業承継で開業するという選択

そこから、今ある病院を引き継いで開業する、私の事業承継が始まりました。

自分ひとりなら開業を決断することは無理だったでしょうが、作本元院長と承継開業コンサルタントの西川さんが様々な相談に乗ってくれたので、開業への一歩が踏み出せたのだと思います。

承継開業で院長になって初めて「経営者になるとはどういうことか」、その意味がなんとなく分かって来たように感じています。

大学や代診時代にはほとんど意識してこなかった「経営」について、これからはもっともっと勉強していかなければならないと感じています。そこで、これまで病院を経営されてきた作本元院長やコンサルの西川さんがバックアップしてくださるのは大変有り難いことです。

承継開業のメリットが後押しになった

西川:「開業は怖い」と多くの勤務医先生は仰いますが、深野先生がやれそうだと感じたきっかけはありましたか。

深野:私は今ある病院を引き継いで開業する「承継開業」でスタートしたので、引き継ぎ当日から多くの患者様が来院されました。

新規で開業すると、最初は開店休業のような状態もあると聞いていましたので、初日はどうなんたろうと不安がありましたが、初日から新規と承継との違いが実感できました。

今は1月で動物病院は比較的暇な時期ではありますが、平均で30件以上は来院数があります。これから春になってフィラリアの時期に入ると、現在の獣医師、スタッフ数でやれるかどうかが心配になっています。

昨年の今頃は転職先が見つからずに「この先どうして生活していこうか」と悩んでいましたが、この1年間でピンチヒッター獣医師から院長になって、悩み事がまるで変わってしまいました。承継開業を決断してよかったと思っています。

獣医師の転職には勇気がいる

西川:この規模の病院の院長で、女性は珍しいですね。

承継と言うと、日本では親子や勤務医に病院を譲ることと捉えられていますが、私は第三者の他人に譲ることを勧めています。

それには大きな理由が1つあります。

それは、借金を背負ってスタートするか否かです。

親子や勤務医だと院長はタダ同然で病院を譲ってしまいますが、第三者は他人ですから、多額の借金を背負って開業することになります。今のブランド病院を作られた多くの院長先生が異口同音に仰るのが、「開業した時は借金でお金に苦労した」ということです。第三者は借金を背負っているから最初からやる気、モチベーションが違います。

深野先生は奨学金の返済が大変なのでこのピンチヒッター獣医師への転身を決断されたとのことですが、この借金が今の院長としての深野先生を作ったのだと思います。

深野:そうかもしれません。

大学で6年間、がんばってこられたのもそうですね。

奨学金をもらうために大学6年間がんばって、代診になってからもこの奨学金の返済があったから、「返さなければならない」との思いでがんばってきました。

代診1年目、2年目はいろいろと辛いことがありますから、この借金がなければそこで代診を辞めていたかもしれません。

臨床医として病院勤務をずっと続けられてきたのも、スキルを身に付けてきたのも、「奨学金を返さなければ」との思いからでした。

大学卒業時には返済額が1000万円以上ありましたが、勤務医を経て、ピンチヒッター獣医師の面接を受ける頃には半分にまで減らしてきました。かなり頑張って返済してきたように感じています。

転職を考える勤務医や獣医学生さんにメッセージ

西川:深野先生から開業を目指す勤務医先生や学生さんにメッセージをお願いします。

深野:転職を考えているなら、正社員にこだわることなく、このピンチヒッター獣医師を経験してみることもありかなと思います。

今とは違った住環境、診療方針、客層や、私がエキゾチック診療や外科手術を習得できたように、ピンチヒッター獣医師として行った病院から多くのことが学べます。

またこのピンチヒッター獣医師として一歩を踏み出したことで、承継開業コンサルタントの西川さんや面接して頂いた作本元院長、派遣された大阪の病院の院長と新たなご縁が生まれました。

このご縁が出来たことで、院長としての私の今があります。

これまでの人生を変えたいのなら、あれこれと悩むよりもとにかく一歩、踏み出す勇気を持つことが大事だと思います。

【小動物臨床】獣医師の転職について

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