獣医師が考える!自分の 健康 について

これまでこのサイト「Succession」で取り上げてきたのは、「見えているリスク」です。犬の頭数が減っていること、動物病院の収入源である高齢犬がこれから激減していくことは「見えるリスク」ですが、

リスクにはもう1つ、「見えないリスク、意識していないリスク」があります。

これが起きた時、たいていの人が「予想外」とか、「想定外」と表現しますがそのリスクの内容によっては、この見えないリスクに気付いた時には遅すぎる場合もあります。

獣医師に一番関係するのは、「 健康 」でしょう。そこで、「健康寿命を伸ばす秘訣」について、医学部教授として初めて「山梨県の健康寿命がなぜ高いのか」を解明された、山縣然太朗先生にお伺いしました。

獣医師が考える!自分の 健康 について

獣医師が死亡してしまうと動物病院は廃業に追い込まれる

Q: 動物病院の院長は50歳代、60歳代と若くして亡くなる先生が多く、また、うつなどのメンタル面で仕事が続けられなくなる先生もおられます。

院長が急死されると、家族がどうしていいのかわからずに、その動物病院は廃業してしまうことになります。

山縣先生は、医師として、山梨県の健康寿命がなぜ高いのかを初めて解明されたと伺いました。

そこで、獣医師に対する予防医学や生活習慣の上での備えなどについてアドバイスをお願いしたいと思います。

山縣教授: 平均寿命(2017年は女性が87.26歳、男性が81.09歳 2018年7月発表)は日本人が世界一であることは大多数の方がご存知でしょうが、「健康寿命」が何歳くらいであるかはご存知でしょうか。

(2016年は男性72.14歳、女性74.79歳 2018年3月発表)。

これからの生き方として「ビンピンころり」が理想だとされていることで、注目されているのがこの健康寿命です。

2015年、この健康寿命調査で、山梨県が男女ともに日本一でした。

さらにWHO(世界保険機構)の調査で日本がトップでしたので山梨県は世界一の健康長寿県ということになりました。

動物病院を 廃業 する理由とは?

健康でいるためには?3つの予防策がある

では、健康でいるためにはどうすればいいのでしょうか。

それには、1次から3次までの3つの予防策があります。

1次予防とは、「健康増進」です。

まさに病気にならないようにすることです。

2次予防とは、「早期発見、早期治療」です。

これは健康診断とか、がん検診を受けましょうということ。

そして3次予防は、「重症化の防止」です。

病気になってももとのようにきちんと仕事や生活ができるようにすること。

つまりは、社会復帰やリハビリです。

もっとも大事な予防策は?

私たちはこの中で「1次予防」が一番大事だと考えてきました。これは生活の中で行うことですから、一番お金がかからない方法になります。

病気は生活習慣に原因があることはご存知だと思いますが、生活習慣病の予防には、3つの柱があります。

それは、「1、食」、「2、運動」、「3、休養」です。

これに、お酒とタバコが関係してきます。この3本柱を自分の生活の中でしっかりやっていけば病気の予防になっていきます。

動物病院の獣医師の働き方について

Q: 動物病院の院長の中には、がん等の重症の病気で手術・入院された後でも以前と変わらない働き方をして亡くなられた先生がおられます。

一旦退院をすると、自分は前と変わらないと意識してしまうことで、早期発見であっても、結果的にがん等の病気を悪化させることになっています。

そんなことにならないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。

重症化を防ぐことが重要

山縣教授: その病気を引き起こしたのは日々の仕事が原因なのだとしたら、重症化を防ぐためには、仕事量を減らさなければなりません。

そのために主治医の先生と相談しながら生活習慣を以前とは変えることです。

仕事量にしても、「1日に診るのは何人までにする」とか、「土日の夜間は休診にして休みを増やす」とか。

そして他の動物病院の先生と連携していくことも良い手段だと思います。

他の動物病院の院長と「助け合い」の関係性を築く

Q: 以前と同じ生活に戻さないという事が大事だということですね。

そして常日頃から他の動物病院の院長と相互に助け合う関係性を築いておくと、普段も助かると、まさかの時も大いに頼りになるということですね。

 

山縣教授: 健康であるためには、「社会」との関わりを抜きにすることはできません。

この社会との関わりは、2つの要素から成り立っています。

ソーシャル・ネットワーク

1つは、ソーシャル・ネットワーク。

孤立していると自分のSOSを他者に発信することもできません。人と人とのつながりは大事な要素です。

団結力

もう1つは、ソーシャル・コヒージョン。団結力です。

この山梨には、「無尽」というコミュニティ組織があります。獣医師で言えば、「獣医師会」というような組織です。

自分がこの無尽に入っていることが社会とのつながることになっているのです。

山梨の健康寿命世界一のヒミツ

Q: この無尽が山梨の健康寿命世界一と密接に関係しているとのことですが。

山縣教授: この無尽とは、一昔前は「無尽講」とか、「頼母子講」とかと呼ばれて、どの地方にもあった組織です。

互いにお金を融通するためにできたとのことですが銀行ができるとこの組織は衰退していきますが、山梨では、コミュニティーの役割を果たす組織となって生き残ってきました。

山梨の健康寿命世界一との関係性を考えた時に私が医学的研究から解き明かしたのはこの無尽にただ入っていれば健康になるわけではなくどういう形で自分が無尽に参加しているか、その意識が大事だという点です。

楽しくやっている人は元気で、長生きです。

自分からすすんで参加し、楽しむことが健康寿命を延ばすことにつながっていることを私は医学的に証明したのです。

獣医師が健康面で気をつける年齢は?

Q: 医者の立場からみて、健康面で気をつけなければならない年齢をお教えください。

山縣教授: 健康診断を受けた方が良いという国が決めた基準がありますので、ご紹介します。

・メタボ検診は40歳以上

・大腸がん、胃がんは40歳

・女性の子宮がん、乳がんは20歳から

となっています。

これは早期発見、早期治療という観点からです。

動物病院の院長で亡くなった先生のお話がありましたが、年に1度でも定期的に健康診断を受けていたら、悪化する前兆は見つけられていたかもしれません。

がんや生活習慣病の重要なポイントとは?

がんや生活習慣病について、1つ、大事なポイントをお話しておきます。

それは、《悪い病気ほど、痛み等の前兆がない、わからない》という点です。

例えば、胃潰瘍は早い時期から痛くなりますが、胃がんはほとんど痛みがない場合が多い。

そのため、痛みが出て気付いた時にはすでに手遅れになっている場合が多いのです。

脳梗塞も、心筋梗塞も、同じです。頭や心臓が痛くなった時には、梗塞を起こしている。

悪い病気ほど突然やってきます。

こうしたがんや梗塞も、検査さえすれば、痛みといった自覚症状が出る前にわかります。

動物病院の院長先生は日々お忙しいのでなかなか健康診断を受けることができないでしょうが忙しい仕事だから身体は無理しているはずです。

年に1回でも健康診断を受けておくと、身体面での安心につながるのではないかと思います。

山縣然太朗 山梨大学医学部・大学院社会医学講座教授

(※この原稿は2016年の取材原稿に編集部が注釈を入れてネット原稿として作成しました)

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