日本M&Aアドバイザー協会 ・大原様との対談記事

なぜ動物病院業界は第三者承継に適しているのか?

 

日本M&Aアドバイザー協会 代表理事 大原達朗

承継開業コンサルタント 西川芳彦

過去記事

M&A で買収できる人はどれくらいいるのか?【前編】

「大が小を呑み込む」イメージが強い「M&A」。そのため、日本ではマイナスイメージが持たれている。一方、個人病院と個人獣医師をつなげるのが動物病院業界の事業承継だが、他業界からみるとどのように映るのかを探るべく、日本M&Aアドバイザー協会・代表理事の大原達朗先生と承継開業コンサルタント、西川芳彦との特別対談を企画した。

《1》 他業界のM&A市場はどうなっているのか?

西川: まずはこの協会を作られた動機、経緯からお聞かせください。

大原代表理事(以下、大原): 協会の設立は20108月です。当時、中小企業のM&Aは殆どの方に知られていなくて、売り手買い手の当事者同士でのM&Aの場合にトラブルになるケースが多々ありました。そこでこのM&Aについての情報を伝えるためとM&Aを仲介する専門家が必要であると考えて、全国でM&Aアドバイザーを養成するためにこの団体を立ち上げました。

西川: 私は動物病院を専門に個人病院と個人の獣医師を繋げるサポートをしています。他業界でのM&A市場はどうなっているのでしょうか。

大原: 1億円台から1000万円台へと取引のサイズはどんどん小さくなっていますが、「大が小を呑み込むケース」が大半です。

西川: 一般的にM&Aは強者が弱者を呑み込むという、マイナスイメージを持った人が多いです。

大原: M&Aが「大が小を呑み込む」形になってしまうのは、2つの理由があるからです。1つは、お金の問題。もう1つは、経営力の問題です。

お金の問題について言えば、案件規模が小さくなったとはいえ、1000万円単位の金を一括キャッシュで出せるのは小さな会社ではできません。また経営力については、買った後にその会社の事業を伸ばすことが大事なので、経営力がある人が買ってくれないとM&Aの意味がありません。今は残念ながら、経営力のある人は売られている会社よりも大きい会社を経営する人が多い。結果として、「大が小を呑み込む」ことになってしまいます。

今、私が感じているのは、「大が買う価値があると考える小があまり無い」という点です。

小が小を買う環境を作っていかないとこのM&A市場はこの日本で伸びていかないだろうと考えています。大が小を買う場合は異業種からの参入でもいいのですが、小が小を買うのは同業者でなければできません。

例えば、動物病院の場合、大が異業種参入で小を買うことはあり得ますが、小が小を買うとすれば、獣医師が居ないと話になりません。企業が個人病院を買う場合は、獣医師をサラリーマンとして雇えば他業種からの参入は理論的には可能です。一方、個人が個人病院を買う場合、院長はリタイアしてしまうので、買い手は獣医師でないと無理な話です。個人が個人病院を買うとなると、お金の問題さえクリアできれば可能になります。

動物病院のM&Aは「小と小のM&A」に非常に向いている業界ではないかと思います

《2》「金融機関がすすんで融資する」のが動物病院事業承継の特徴点

西川: 動物病院業界では「小が小を事業承継するケース」が圧倒的に多いのですが、他業界のM&Aと比べて驚くのは、金融機関がすすんで融資をするという点です。今回、福岡のケースで、保証人なしで1億5000万円の融資を得ることができました。

大原: それは、承継者を募集している動物病院には稼いでいる動物病院が多いからでしょう。動物病院の院長は体力的にキツイ仕事だから、儲かっていてもリタイアしたいと考える。他業界で儲かっている会社の社長が体力的に限界だからといって会社を売って辞めることはあり得ません。この点、動物病院の事業承継は他業界と比べて特殊だと言えます。

そして他業界のM&Aにおいては、まず銀行融資がなかなか出ないのが普通です。ただ過去に実績のある人には出ます。例えば、美容院を2店舗成功させている人が3店舗目を出した時とかには銀行は融資するでしょう。最近、このケースで融資を得られましたが、それでも4ヶ月は掛かりました。

当事者間のM&Aはリスクだらけである

西川: 動物病院業界では、コンサルタントを介することなく、院長と勤務医の当事者同士で交渉した方がいいと考える獣医師が沢山います。他業界で様々なM&Aを見て来られて、大原先生は当事者間でのM&Aをどのように捉えておられるでしょうか。

大原: 当事者だけだとM&A取引について何も知らないのでリスクだらけだと言えるでしょう。

やはり一番のトラブルは、「売却金額」です。売りたい人は高く売りたい。買いたい人は安く買いたい。交渉中にモメるならまだいい方で、多くのケースでは実際に売却した後でモメる。この売却金額を当事者間で話し合って決めること自体がリスクであって、こうした点はやはり専門家を介してやるべきだと言えます。仲介者が入ることで、当人に面と向かって言えないことも伝えられますし、仲介者が妥協点を見つけてくれます。

西川: 私が仲介者で居ることで、これまで承継リタイアした多くの院長から認めて頂いていることがあります。

それは、「譲渡価格の決定」です。私が価格とその根拠を提案しますと、全体の95%くらいの案件は「それでいいです」と言って、譲渡金額が決まってしまいます。しかし、価格交渉の時に院長が依頼した税理士や弁護士が入ってくると、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。

大原先生はこんなケースではどのように対処されておられますか。

大原: 売主が「安い」と言った場合、私は税理士や弁護士に「その金額で買ってくれる人を連れて来て下さい」と言います。それで連れて来たら、私の負けですが、大抵の場合、連れて来れることはありません。

ここでは税理士や弁護士の役割を認識しておくことが必要です。税理士、弁護士はリスクを見つけることがその役割だという点です。税理士、弁護士が会社買収で社長に「止めた方がいい」とアドバイスするのは、ある意味正しいことです。

しかしここで大事なのは、反対されてもそのM&Aはやらねばならないと、社長が強い信念を持っているかです。第三者に判断を任せるようだとM&Aなど、とてもできないですから。

西川: 私もそう思います。お陰様で私が仲介した事業承継は、承継前よりも売上が落ちたのは5%程度です。

本日は貴重な話を有難うございました。

➡️日本M&Aアドバイザー協会  ホームページ https://www.jma-a.org

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です